某システム会社 「サポート」を軸としたプロモーションコンセプト開発

それ、本当に「強み」ですか?
既存事業の価値を再整理し、提案の土台をつくる
今回取り上げる企業は、守秘義務などの問題からあまり詳しいことは書けませんが、当社の「提案」における役割を果たした典型的な好事例なので、取り上げることにしました。ぼくは、某大手総合印刷会社の外部協力スタッフとしてプロジェクトに参加。状況分析、課題抽出、コンセプトメイキングなど、企画の大半を担当しました。
クライアントは(守秘義務があるので詳しく書けないため、ぼやかしますが…)長年にわたり多くの利用者を抱え、業界内でも高い認知度を持つ企業。そして対象商品は、市場で大きなシェアを誇り、この企業の売上の大半を支えるシステムです。しかし市場環境の変化や競合ブランドの台頭により、シェアは減少傾向に。新規利用者増加施策が求められていました。
当初、クライアントは「サポートの手厚さ」を大きな強みとして捉え、これをフックにしたプロモーション展開を想定していました。もちろん、それ自体は間違いではありません。しかし、ヒアリングや資料分析を進める中で、ぼくたちのチームは一つの疑問に行き当たりました。
「サポート」とは、具体的に何を指しているのだろうか。
一つの言葉に、複数の意味が混在していた
ヒアリングや調査を進めると、「サポート」という言葉の中に複数の異なる価値が含まれていることが見えてきました。
例えば、
- 操作方法や設定方法を案内するサポート
- 実務上の悩みや処理方法に関するサポート
- 利用者の判断を支える情報提供
これらはすべて、お客さまは「サポート」と呼んでいましたが、本質的には役割も目的も異なります。また、競合企業も同様の取り組みは当然のこととして行っています。このシステムの利用者は「サポート」を購入の理由の一つに挙げるかもしれません。しかし、他社も最低限のことは行っています。そして、見込み客は仮に「無料おためし」などを利用したとしても、サービスの品質まで見抜くのは困難です。わかるのはせいぜい「基本機能」と「使用感」のレベル。つまり、「サポート」という事実だけでは差別化が難しいのです。
そこで私たちは、「サポート」をそのままUSPとするのではなく、まずこのクライアントが(彼らのいう「サポート」を一度取り払った上で)価値の構造を整理してみました。
強みそのものではなく、強みを支える仕組みに着目
分析の結果、見えてきたのは別の姿でした。このクライアントの強みは、特定のサポートの「内容」や「領域」ではありません。長年にわたり利用者が安心してサービスを使い続けられるよう支えてきた「運用体制」や「情報提供体制」、そして、それらを実現する基盤となった「過去のサポート情報やユーザーの声、社内の暗黙知などの『蓄積』」に価値があるのではないか。
つまり、「サポートが強い」ではなく、「長期的な利用を支える基盤が強い」という捉え方です。
これらは似ているようでいて、実はまったく異なります。前者は「コールセンター対応」「AIによるQ&Aサポート」「専門家による使い方ノウハウ」といった具体的な機能やサービス、コンテンツを指します。しかし後者は、企業が提供している価値そのものです。この「価値」から、あらゆる機能やサービスが生まれます。そしてこの価値は、一朝一夕で得ることができません。
ぼくたちのチームは、この考え方に基づき、クライアントの「価値」を再定義したコンセプト重視型の資料を作成し、プロモーション戦略や実施プランを作成する前に、一度この段階を固めることを提案しました。
提案書のページ構成
状況分析編
- 市場動向の変化
- ターゲット動向(顕在ニーズとインサイト)
- 仲介業者・販売パートナーの動向
- クライアント商品のSWOT分析
- 強みの追加考察——「サポート」についての分析
- 考察のまとめと課題抽出
価値定義編
- ターゲットの関心と本質的なニーズ
- 商品の「選ばれ方」の変化
- 競合商品との比較と強み・弱みの再確認
- 価値再定義=プロモーションコンセプト案
コミュニケーション戦略編
- 施策・コミュニケーション設計の基本的な考え方
- 戦略・戦術案のまとめ
- ターゲット像
- 戦略案・価値の再定義案
- 戦術基本方針案
- 将来ビジョン
- 今後の展開について(長期スケジュール案)
※これ以上書いてしまうと守秘義務に抵触する可能性が高くなるので、本コンテンツではここまでのご紹介とさせていただきます。
施策を考える前に、価値を整理する
プロモーションやコンテンツ制作の現場では、「何を発信するか」という議論から始まることが少なくありません。
しかし、その前に「そもそも何を強みと考えるべきなのか」が整理されていないケースは意外に多くあります。今回のプロジェクトでも、広告や施策の検討に進む前に、まず価値の再整理を行いました。市場環境や競合状況、自社の資産、利用者のニーズを整理しながら、「本当の強みは何か」「どの価値を中心に据えるべきか」「どのような考え方でコミュニケーションを設計すべきか」を整理することで、自分たちも、クライアントも、腹落ちしやすい企画をつくることができます。
提案基盤設計とは

当社はこのような仕事を「提案基盤設計」と呼んでいます。企画やコピーを考える前に、以下の作業を通じて、文字通り「提案の基盤」をつくりあげます。
- 情報を整理する
- 課題を構造化する
- 強みを再定義する
- コンセプトの土台をつくる
施策やツールは、いくらでも出すことができると(限界はありますが…)思います。しかし、土台となる考え方が曖昧なままでは、どれだけ優れた施策を実施しても、方向性がぶれてしまいます。このプロジェクトは、まさに「強みの再定義」を通じて、その後の議論の土台を整えるための取り組みでした。

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